2 イオンh 【イオンとイオンの生成】 イオン 原子が最外殻の電子を放出したり,最外殻に電子を取り込んだりして最外殻が安定な電子配置(閉殻か8個)になった状態がイオンである。原子は正の電荷をもつ〔
陽子 〕と負の電荷をもつ〔 電子 〕の数が等しいので電気的に中性であるが,原子が電子を放出することによってできたイオンは陽子よりも電子の方が少なくなり,全体で正の電荷をもつので〔
陽イオン 〕という。一方,原子が電子を受けとることによってできたイオンは,陽子よりも電子の方が多くなり,全体で負の電荷をもつので〔
陰イオン 〕という。イオンはNa+やCl−といった化学式で表され,これを〔 イオン式 〕という。 陽イオンの生成 最外殻の電子(価電子)数が〔 1〜3 〕個の原子は,最外殻の電子を放出して安定な電子配置となる。電子を放出した分だけ正の電荷をもつ。名称は「〜イオン」とつける。生成したイオンの電子配置は,原子番号の最も近い希ガス元素と同じになる。 例)11Na(陽子11,電子11 )⇒〔 Na+ 〕(陽子11,電子10)ナトリウムイオン |
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Naが電子を1つ放出したので,全体で+1(陽子11,電子10)になったのでNa+と示す。 20Ca(陽子20,電子20)⇒ 〔 Ca2+ 〕(陽子20,電子18)カルシウムイオン 13Al(陽子13,電子13)⇒ 〔 Al3+ 〕(陽子13,10)アルミニウムイオン |
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Caは電子を2つ,Alは電子3つ放出したので,それぞれ全体で2+,3+となり,Ca2+,Al3+と示す。 例題 Mg,Kがそれぞれイオンになったときの電子配置,イオン式,イオンの名称を記せ。 12Mg K2L8M2 ⇒ K2L8 Mg2+ マグネシウムイオン 19K K2L8M8N1
⇒ K2L8M8 K+ カリウムイオン 陰イオンの生成 最外殻の電子(価電子)数が〔 6〜7 〕個の原子は,最外殻に他から電子を取り込んで安定な電子配置となる。電子を取り込んだ分だけ負の電荷をもつ。名称は「〜化物イオン」とつける。イオンの電子配置は,原子番号の最も近い希ガス元素と同じになる。 例)17Cl(陽子17,電子17)⇒ 〔 Cl− 〕(陽子17,電子18)塩化物イオン 8O(陽子8,電子8)⇒ 〔 O2− 〕(陽子8,電子10)酸化物イオン |
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Clは電子を1つ,Oは電子を2つ受け取ったので,それぞれ全体でー1,ー2となり,Cl−,O2―と示す。
F,Sがそれぞれイオンになったときの電子配置,イオン式,イオンの名称を記せ。 9F K2L7 ⇒ K2L8 F− フッ化物イオン 16S K2L8M6 ⇒ K2L8M8 S2−硫化物イオン
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主な単原子イオン(1個の原子からできているイオン) 単原子インは,電子配置で考えられるものは考えてイオンにする。それ以外は覚える。 |
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+,2+,3+の陽イオンをそれぞれ一価,二価,三価の陽イオンといい,−,2−のイオンイオンをそれぞれ一価,二価の陰イオンという。 |
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例題 次の中から正しいものをすべて選べ。 @ 原子の大きさは,原子核の大きさにほぼ等しい。 A 原子の中心には,陽子を含む原子核があるので,原子は正に帯電している。 B 最も外側の電子殻がLである原子どうしでは,化学的性質が似ている。 C 原子の質量は,原子に含まれる陽子と電子質量の和にほぼ等しい。 D 原子番号が同じで,質量数が異なる原子どうしを互いに同位体という。 D 例題 次の原子が安定なイオンになったときのイオン式と名称を示せ。また,そのイオンと同じ電子配置をもつ貴ガスの名称を答えよ。 (1) Li (2) O (3) Al (4) Cl (5) Ca (1) Li+ K2 リチウムイオン He (2) O2− K2L8 酸化物イオン Ne (3) Al3+ K2L8 アルミニウムイオン Ne (4) Cl− K2L8M8 塩化物イオン Ar (5) Ca2+ K2L8M8 カルシウムイオン Ar
(1) Cu2+の電子の数は27個である。銅の原子番号はいくつか。 (2) NeとArのうち,原子半径が大きいのはどちらか。また,Al3+とO2−のうち,イオン半径が大きいのはどちらか。
(1) 29 Cu2+ ⇒ Cuが電子を2つ放出してできたイオン Cuは27+2=29個の電子をもつ。陽子数=電子数なので, 原子番号29 (2) Ar, 10Ne(K2L8)と18Ar(K2L8M8)なので,Arの方が最外殻が一回り大きい O2− 13Al3+(K2L8)は陽子13(13+)と電子10(10−),8O2−(K2L8)は陽子8(8+)と電子10(10−)なので,Al3+の方が,電子(10−)をより強く引き付けている(+13の方が+8よりも強くL殻を引き付けている)のでAl3+の方がイオン半径が小さくなる。
例題 |
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(1) (ア) 〜 (ク) に当てはまる元素記号を記せ。 (2) Liの電子配置はK2L1と示される。Pの電子配置を示せ。 (3) Mgが安定なイオンになったときの電子配置を示せ。 (4) 陽性が最も強い元素を元素記号で表せ。 (5) 一価の陰イオンになりやすいものを2つ選び,元素記号で記せ。 (1) (ア) C (イ) N (ウ) O (エ) Ne (オ) Na (カ) Al (キ) S (ク) Cl (2) @ A K2L8M5 (3) K2L8 (4) Na(周期表の左下) (5) F,Cl 多原子イオン 複数の原子からなるイオンを多原子イオンという。次に示す多原子イオンはよく出てくるので覚える必要がある。 |
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例題 次のイオン1個がもつ電子の総数を答えよ。 (1) OH− (2) NH4+ (3) SO42− (1) 8O 1つ,1H 1つ,全体で1− ⇒ 8+1+1=10個 (2) 7N 1つ,1H 4つ,全体で1+ ⇒ 7+1×4−1=10個 (3) 16S 1つ,8O 4つ,全体で2− ⇒ 16+8×4+2=50個 【イオン化エネルギーと電子親和力】 イオン化エネルギー 原子の最外殻から電子1個を取り去って1価の陽イオンにするのに必要なエネルギーをイオン化エネルギーという。イオン化エネルギーが〔 小さ 〕い原子ほど陽イオンになりやすい。(陽イオンになる原子(最外殻電子が1〜3)は自ら電子を放出して陽イオンになるからイオン化エネルギーが小さい。) 例)11Na → Na+ + 電子 |
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電子親和力 原子が最外殻に電子1個を受け取って1価の陰イオンになるときに放出されるエネルギーを電子親和力という。電子親和力が〔 大き 〕い原子ほど陰イオンになりやすい。(陰イオンになりやすい原子(最外殻電子が6,7)は電子を受け取って安定化(イオン化)するから電子親和力が大きい) 例)17Cl + 電子 → Cl− |
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